叶う。 Chapter2




それに私はある事に気付いてしまった。


私は大きな勘違いをしていたのかもしれない。

あの子が私の中に居る限り、シオンは私を傷つける事はしないと思っていた。

だけれどそれは違うのかもしれない。

シオンにとっては、あの子は私とは違う人間なのだ。


見た目が同じだから、触れたり甘えたりすればそれなりに優しく接してくれているけれど、きっとそれは私の中にあの子の面影を感じるからなのだ。

だけれど中身は別人である事を、シオンはきちんと分かっているし、おそらくだけれど私が強引にあの子をあの暗い海の底に閉じ込めた事にシオンは気がついている。

あの子の為なら、シオンは何でもするだろうと高を括っていたけれどそれは大きな間違いだと気がついた。

私とあの子が入れ替わってから約一ヶ月、きっとシオンはずっと我慢をしていたのかもしれない。

だけれど、きっと私の好奇心がシオンの逆鱗に触れてしまったんだろう。

あの子の目を通して見ていたシオンは、いつもあの子を優しい眼差しで見守っていたけれど、今目の前に居るシオンはあのシオンとは全くの別人だった。

蔑んでつまらなそうに私を見下ろすその瞳は、感情すら読み取れないほどに冷めきっていて、きっとこれがシオンの本来の姿なんだろうと思った。


そんな自分を隠すことすら、私に対してはしたくなくなったんだろう。

シオンからしてみたら、私はきっと恵令奈と大差ないくらいの存在なんだという事が身に沁みて分かった。






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