叶う。 Chapter2
ただ唯一違うのは、私の中にシオンの大切な人間がいる事だけだ。
しかも姿の見えないその存在が、もし私の中から消え去ったとシオンが判断してしまったら、私はきっとシオンにとって要らない存在になる。
私はどうしようもない恐怖と絶望に、全身が粟立つのを感じた。
一番怒らせてはいけない人を怒らせてしまったのだ。
シオンはそんな私を相変わらず冷めた視線で見つめながら、静かにこう言った。
「・・・・死ぬのが怖いか?」
そう言って、突然私の首に両手を掛ける。
ぐっと力を入れられると、途端に気道が塞がって私は声も出せずにシオンの手を掴んで放そうとした。
だけれどシオンはそんな私を嘲るように、更に強く首を締め付けた。
私は苦しくて暴れたけれど、暴れれば暴れるほどに段々と意識が遠のくのが分かった。
次第に遠のく意識の中、シオンの冷たい声音が微かに聞こえてきた。
「やっぱりお前じゃない・・・・。」
その瞬間、シオンはぱっと手を離した。
私は突然流れ込んできた酸素に噎せ返った。
ゴホゴホという鈍い咳と、脳が酸素を求めて深く呼吸を繰返して涙を流している私を、シオンは相変わらず蔑んだ目で眺めていた。
どうしてこんなことされなきゃいけないんだろうと、いつもの私なら言ってやりたい所だけれど、もうそんな事出来ない。
私はシオンの豹変振りにただ、怯えることしか出来なかった。