叶う。 Chapter2
ある程度呼吸が落ち着いた私は、その場に脱力したままだった。
だけれど涙だけは止まらなくて、私はパジャマの袖口で涙を拭きながらシクシクと泣き続けた。
シオンの中にいるもう一人のシオン。
あの幼かった頃、シオンが私と同じ病院に居た理由。
冷酷で無慈悲なその表情は、間違いなく普通の人間じゃない。
例えるなら、そう悪魔そのものだ。
あの時初めて病院で出会った時、その悪魔は人間に恋をした。
だから悪魔は人間になった。
その子を守るために。
だけれど、その子は姿を消した。
だから悪魔は人間から、また悪魔に戻った。
ただそれだけのこと。
私は何故こんなになるまでその事実を忘れていたんだろう。
成長したシオンは、もう普通に戻っていると勝手に決め付けてやりたい放題したのは私だ。
シオンの中に眠っていた悪魔を呼び覚ましたのは、他の誰でもない私自身なんだ。
どうしてだろうか、私は何故それに気付かなかったんだろうか。
あの日の病院での記憶が、鮮明に蘇る。
それは私じゃなくてあの子が経験した事なのに、私は何故かその出来事を鮮明に思い出した。
そう、全ての始まりはあの病院での出来事がきっかけだったのかもしれない。
あの日あの場所でシオンとあの子が出会った事が、きっと全ての始まりだった。