叶う。 Chapter2
僅か数時間前までの出来事が、まるで夢の中の出来事のように感じた。
シオンのその唐突過ぎる豹変振りに、私は泣きながらも頭を悩ませた。
何がシオンの中の悪魔を目覚めさせてしまったのか、全てが突然過ぎて私には理解が出来なかった。
シオン達がしている秘密の取引を知ってしまったから?
それとも、シオンが自分の手ではないかもしれないけれど人を殺していると知ってしまったからなのか?
それとも、父親の存在を知ってしまったからなのか?
だけれど、それは例え鈍いあの子でもきっといつか気付くであろう事だと思う。
それを興味本位で聞いたことが原因なのか、それとも何か別の事が引き金になったのか、私にはそれが分からなかった。
何よりも、私にとって一番安全だと思っていた居場所がいとも簡単に崩れ落ちた。
多分捨てられる事はないだろうけれど、もう2度とシオンが私に優しい瞳を向けてくれる事はないだろう。
シオンが私に残した選択肢は、私の意志でどうにか出来る問題じゃなかった。
何故なら、あの子はもう居ない。
残された道は、私がシオンと共に堕ちていくことしか出来ない。
だけれどシオンは一生私を愛してはくれないだろう。
あの子のように、優しく見つめられる事も、触れられる事も、私にはもう一生経験出来ないんだろう。
私はどうしてあの子を深い海の底へ落としてしまったんだろう。
私はあの子と入れ替わって初めて、後悔をした。