叶う。 Chapter2
「……それもそれで似合うな。」
シオンはそう言って、片方の口角だけを上げて笑う。
「おだてたってあの子は出てこないよ?」
私もそう言って、同じように笑った。
「いや、別にお前でも構わない。」
「じゃあ、何しに来たの?」
「お前の友達のあの女、会ったことがある。」
私はシオンの言葉で記憶を辿る。
「凛のこと?」
「名前は知らない。」
「それがどうかしたの?」
「あの女の男に、仕事をさせてる。」
「何それ?」
「まぁ、一応忠告しておく。あまり深く関わるな。」
「何で?何の仕事?」
「お前には関係ないだろ?」
シオンはそう言って、鼻で笑う。
なんだか、馬鹿にされてるみたいで癪に触ったけれど、私が何かを言う前に、シオンは私の手を掴んで自分の胸に収めた。
「気になるか?」
頭の上からそんな声が聞こえて来たので、私はぎゅっとシオンに抱き付いた。
「どうでも良い。」
私がそう言うと、シオンは微かに笑って私にキスをすると、直ぐに部屋を出て行った。
なんだか、すごく不愉快だ。
私があの子じゃないと気付いているのはシオンだけなのに、あの態度は一体なんだろう?
まるで読めないシオンの頭の中に、ほんの少しだけ恐怖を感じた。