叶う。 Chapter2
初めてだった。
こんな風に、私がしたことを偉かったと言って貰えた事も、辛かったねと言って貰えた事も。
ただの言葉なのに、こんなにも嬉しくて切なくなる言葉を私は知らなかった。
何も言えずに泣き崩れる私を、レオンはそっと抱き締めてくれた。
「……俺はアイツを守ってやれなかった。」
私を抱き締めながら、レオンは悲しげな声音でそう呟いた。
「俺は君と違って弱い人間だったんだ。だから、シオンを助けてやれなかった。シオンがああなったのは俺のせいなんだ。納得出来ないかもしれないけど、許してやって欲しい。」
レオンの言葉の意味が、私には理解出来なかった。
「知らないと思うけど、俺らには親父がいるんだ。それもとんでもない人間でね。」
私は苦々しげにその名前を口にしたシオンを思い出した。
「シオンは長男だったから“教育”としてそれこそ赤ん坊の頃から普通じゃ考えられない事をやらされてきた。巧く出来なければ殺される寸前まで仕置きされて、シオンはいつも死と隣り合わせの中で生きてきたんだ。」
私は腫れて重たい瞼でレオンの顔を見上げた。
「だけど俺は何もしてやれなかった、臆病だったからそんなシオンを見ていることしか出来なかったんだ。それでもシオンは文句一つ言わなかった。むしろ俺が親父に何かされそうになれば、自ら何かをやらかして、俺を庇った。」
レオンはそう言って大きく息を吐き出した。