叶う。 Chapter2




「いつしかシオンは笑わなくなった。いつも無表情で、子供らしさの欠片もなかった。俺には変わらなかったけど、他人に対しては本当に無関心だった。」


きっと冷たいあの視線はその頃からだったのだろうと思うと、何とも言えない切なさが私の心に突き刺さる。

レオンはゆっくりと目を閉じると、まるで思い出したくないかのように静かに言葉を続けた。


「そんなある日、シオンは家に居た従姉を笑い方が気に入らないというだけで殺した。親父はそれを見て笑ってた。息子が一人前になったと。」


私は思わず息を飲み込んだ。

そんな事を自分の子供がしたら、普通の親ならとてもじゃないけれど笑ってなんか居られないだろう。

この双子の父親は一体何者だろうかと思ったけれど、私はそれを聞くのが怖かったので黙ってた。

レオンの言葉には続きがあった。


「それからのシオンは暴走が止まらなかった。まるで道端にいる蟻を踏み殺すかのように、簡単に他人を傷つけて殺す事もあった。だけどそれだけじゃなかった、シオンはそれと同時に自分自身をも傷つけるようになった。」


あの子の目の前で、何の躊躇いもなく手首を切り裂いた事を私は思い出した。


「アイツは何度も自分を殺そうとした。薬を飲んでみたり、首を吊ってみようとしたり。だけどシオンはそんな自分を止めて欲しかっただけだと思う。本気で死ぬ気なら銃弾1発で済むはずだったからな。」


レオンはそう言って、また悲しげに顔をしかめた。





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