叶う。 Chapter2




「シオンは昔から賢かったから、もし自分が本気で死んだら、俺がアイツの代わりに"教育"される事が分かってたんだよ。だから、君とシオンは同じなんだ。二人とも、誰かを守るために自分を犠牲にした。」


レオンの言葉に私はまた胸に何かが込み上げてくるような感覚がした。


「俺達はなんつーか、妾の子っていうやつだったんだけど、親父の本妻には男が産まれなかったんだ。だから、親父は俺達を母さんから取り上げた。安全に日本というこの国で産まれた俺達は、産まれてしばらくして親父に無理矢理連れて行かれたんだ。だけど結局、シオンがおかしくなっちまった。だから、母さんは親父から俺達をまた引き取った。」


レオンは淡々と私に事の成り行きをそう説明してくれたけれど、痛む頭で私はその成り行きを理解する事が難しかった。


「まぁ、早い話がそんな不幸の中でシオンとアンナが出逢った訳だ。誰が悪い訳じゃない。悪いのは俺の親父とお前の母親だ。」


レオンはそう言って、何だか酷く疲れた顔をした。


「シオンは自分と同じように、親に苦しめられたアンナに特別な感情を抱いたんだろう。だから、君がアンナの中に居たことに戸惑って居るんだと思う。でも、安心していいよ。俺からちゃんとシオンに話す。」


「で、でも……さっきシオンが言ったの。子供が出来れば私がここに居る口実が出来るだろって。だから、きっとシオンは私を追い出したくて仕方ないんだと思う。」


私はそう言って、また悲しくなった。

私の言葉にレオンは眉間に皺を寄せた。


「それは、どういう意味?シオンは子供を産めって言ったの?」


「産めとは言ってないよ、ただ出来たらここに居る口実が出来るだろって言った。」


「……思ったより、重症かもしれない。」


レオンはそう言って立ち上がると、机に行って引き出しを開けた。





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