叶う。 Chapter2




そして、私の元に薬を沢山持ってきた。

「とりあえず、今日はこれ飲んで。こっちは明日から毎日欠かさず飲んで。生理止まるけど、シオンが落ち着くまでは忘れずに毎日飲むんだ。」


レオンはそう言ってから頭を抱えた。


「何とか落ち着かせる。だから、それまで君はあまりシオンと顔を合わせない方がいい。」


レオンはそう言ってもう一度優しく私を抱き締めると、薬を飲んで早く寝るようにと私を促した。

私にはまだ知りたい事があった。
双子の出生の秘密は、なんとなくレオンの話で理解出来たけれど、父親についてはまだ何も分からない。

だけれどシオンの言葉が微かに頭に過った。
欲深く詮索する事は、自分を更に破滅に追い込むような気がした。


「あ、ありがとう…レオン。ごめん……」


私は薬を受け取ると、小さくお礼を言った。


「いや、俺こそごめん。ところで君の名前は?」

「名前?」

「そう、君はアンナであって、アンナじゃないんでしょ?」

「……うん、でも名前なんて無いよ。」


そんな事、考えた事もなかった。
確かに私はアンナでも、かなうでもない。

それはあの子の名前だから、私はあの子の中に存在するのだから同じだと思ってた。


「紛らわしいから、君に名前をつけようか?」


レオンはそう言って暫く考えた。


「君は"アリス"なんかどう?不思議の国からやって来たんでしょ?」


レオンはそう言って笑った。

その言葉に、思わず私もつられて笑った。

確かに私には、ぴったりの名前かもしれない。


あのモノクロの世界は、誰が見ても不思議な国だろうと思ったからだ。


「でも、アンナがアリスだと知られるのは余り良くない事だから、特に母さんにとってはね。だから、普段はアンナとして生活するように。」


レオンはそう言ってまた私の頭を優しく撫でた。
私はその仕草ににっこり微笑むと、ゆっくりと頷いた。






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