叶う。 Chapter2




私は生まれて初めて、自分の名前を貰った。

それは何故かとても嬉しくて、レオンの部屋を出る時には、もうすっかりいつもと同じくらい気分が落ち着いていた。

私と言う人格を否定せず、名前まで与えてくれたレオンにすごく感謝したし、私が耐えてきた事を労って貰えた事にとても癒された気分になった。


それにレオンが過去のシオンの話をしてくれたおかげで、あんな事をされたけれど、私はシオンを憎む事はもう出来なかった。


シオンがされてきた事は私には分からないけれど、別の人格が現れるほどの事をシオンもされてきたと思うと、あの冷たい瞳も、威圧的な雰囲気もシオンの見せる何もかもが、当たり前の行動なのだと思う。

そんな話を聞いてしまったら、私はもうシオンにどんなに酷い事をされても、嫌いになる事はないだろうと思った。


だけれど同時に思う。

私はそんなシオンの一番大切な人を、奪ってしまったんだということに。

見た目は同じでも、私とあの子は違う。

シオンとレオンが違うように。


私はあの子の代わりにはなれないのだろうか?

シオンが私を受け入れてくれるならば、私を見てくれるならば、私は何だって出来ると思った。

例え一緒に死ねと言われても、今の私ならシオンと死ぬ事を選べる気がした。


私は静まり返った廊下を音を立てずに歩きながら、リビングに向かった。

リビングにも誰の姿もないことに安心して、冷蔵庫から水とアイスノンを取りだして、また静かに自分の部屋に戻った。




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