叶う。 Chapter2
「あー、シオン居るの?俺が行って来るよ。」
レオンはそう言って、直ぐに部屋を出て行った。
私はなるべくシオンと顔を合わせたくなかったので、慌ててレオンの部屋を飛び出してリビングへと戻った。
廊下にはシオンもレオンも居なかったから、きっとシオンは部屋に居てレオンはシオンの部屋に入ったんだと思った。
バタバタと急ぎ足でリビングに戻ると、ママはもう食事の用意を終えていた様子で、キッチンでタバコを吸っていた。
「どうしたの?そんなに慌てて?」
息を切らして戻って来た私に、ママは不思議そうにそう言った。
「さ、寒いから、走ってきた、の。」
私はにっこり笑いながらそう言って、ダイニングテーブルに座った。
「家で走り回らないの。あの子達居た?」
「うん、レオンは起こしたよ。シオン起こしてくるって。」
「そう、じゃあご飯にしましょう。」
ママはそう言ってタバコを消すと、トースターのスイッチを押した。
そんなママの後姿を見ながら、ふと思う。
昨日、レオンは自分たちが“妾”の子だと言っていた。
こんなに綺麗で優しいママが、どうしてそんな男の愛人になんてなったのだろうか。
ママくらい綺麗だったら、どっかの国の王様にでも見初められてもおかしくないのに。
ママが自ら望んでその男の愛人になったのか、それとも別の理由があったのか、私はとても気になった。