叶う。 Chapter2
スタイルの良い後姿を観察しながら、私はそんな事を考えていた。
だけれどそれは私が知って良いことじゃないし、調べてもいけない事だとも思った。
私のそんな複雑な思考は、リビングの扉が開いたことによって一瞬にして停止した。
「おはよう。」
ママはそっちを見もしないでそう言った。
それはいつもの事だけれど、せめてママが名前を呼んでくれれば良いのにと思った。
振り返って確認したいけれど、怖くて確認出来ない。
だけれど段々と近づく足音は紛れもなく2人分の足音だったから、私は振り向かずに立ち上がってママの手伝いをする為にキッチンへと入った。
それと同時にトースターが軽快な音を立てて、パンが焼き上がったのを教えてくれた。
私は焼きあがったパンをお皿に乗せると、またパンをトースターにセットする。
ママはその横で人数分のコーヒーを入れていた。
私はママの横からちらりと双子の様子を盗み見た。
その途端、シオンの冷たい蒼い瞳と視線が合った。
見なければ良かったと後悔したけれど、もう後の祭りだ。
だけれど何故か、シオンの視線は昨日とは比べ物にならないくらい普通だった。
普通と言っても他人からしたら、どう見ても睨まれているようにしか見えないだろうけれど、昨日の感情のない瞳と比べたら全く違う。
どういう心の変化があったのか、それともママが居るからなのかは分からないけれど、私はその視線に心底安心した。