叶う。 Chapter2
無事に食事を終えたのは、やっぱり私が一番最後だった。
兄達はとっくに食事を終えて、今日はなにやらフランス語の発音について話をしていたけれど、私には何を言っているのかさえさっぱり分からなかった。
「ごちそう様でした。」
私がそう言うと、兄達は揃って席を立つ。
そして食器を片付けようとする兄達とママに向かって、自分が片付けをすると言った。
「じゃあ、お願いしようかしら。」
ママはそう言って、テーブルに座ったままタバコに火をつけた。
兄達は部屋に戻るのかと一瞬思ったけれど、そのままソファに移動してそこで何やらさっきの続きの会話をしている様子だった。
部屋に行ってくれれば良いのにと一瞬思ったけれど、そんな事言えない私は無言で人数分の食器を水で流し始めた。
「そうだわ、アンナ。頑張ったご褒美に何か欲しい物はない?」
ママは後片付けをする私に、後ろからそう声を掛けてきた。
きっと昨日のご褒美なんだろうけれど、私には特に欲しい物が思い浮かばなかった。
出来る事ならシオンを普通に戻して欲しいけれど、それは無理な願いだ。
「うーん・・・特にないよ。」
私は暫く考えた後にそう返事をした。
昨日までの私なら、絶対部屋を改装して欲しいとか、可愛い服が欲しいとか言ってしまっていただろう。
だけれど今は何故かそんな欲すらなくなっていた。