叶う。 Chapter2
そんな馬鹿な真似はしない。
「夢を見てたの。」
「……夢?」
「そう、夢だったの。」
「どんな夢だったか覚えてるかい?」
「すごく怖い夢だったの。自分なのに自分じゃない誰かが、ずっと自分の振りをしてた。」
「それが昨日までのアンナだったのかい?」
私は先生の言葉にゆっくりと頷き、隣に座っているママに抱き付いた。
「す、すご……く、こ、怖かった……。」
ママは少し動揺していたけれど、泣きながら抱き付く私の髪を優しく撫でた。
先生はそんなママを見て、言いにくそうにこう言った。
「念のため、ですが暫く検査入院の措置をとるというのはどうでしょうか?」
「いや‼ママ……家にかえ、りたい。」
「アンナ、念のためだよ?何もなければ直ぐに帰れる。心配しなくても大丈夫だよ?」
私は泣いてママにすがる。
「アンナ、頭をぶつけたとかそう言う事もあるかもしれないし、そう言う検査はした方が君の為だよ?」
「ぶつけてない‼」
まぁ、検査されたところで、きっと私は正常だって判断されるに決まってる。
私は馬鹿なあの子と違う。
だから面倒だけれど、先生が退く気配がなければおとなしく検査してあげようと思った。
だけれど、嬉しいことにママの一言で先生は漸く諦めた。