叶う。 Chapter2
「学校行って来ます。」
私はママにそう告げて、レオンに手を振ってからリビングを出た。
やっぱりレオンは扱い易くて助かる。
レオンは昔からシオンと学力的にも大差ないけれど、何より面倒くさがりなので勉強が嫌いだった。
だから、どちらかと言えばシオンの方が頭は良い。
だけれど、レオンはシオンと違って適応能力が高い。
相手がどんなタイプの人間なのかをよく観察して、瞬時にその人にあった対応が出来るのだ。
その変わり身の速さは素晴らしく、とにかく人に嫌われない方法をよく心得ている。
少しはそれを見習いたいと、私は密かに思った。
玄関を開けると、冷たい北風が吹き荒れていた。
途端に冷たい冷気を感じて、思わずコートの襟元をぎゅっと握った。
きっと少し歩けば温まるはずだけれど、私はのんびりと庭を眺めながら歩いた。
12月が近いからか、庭には色とりどりのポインセチアの花が植えてある。
その綺麗な赤やピンクを私はしっかりと瞳に焼き付けた。
あの子はよくあそこのベンチに座って、本を読んでいたっけ?
ふとそんな事を思い出し、何だか一瞬気分が悪くなった気がした。
私はベンチから視線を逸らすと、真っ直ぐにエレベーターに向かって歩いた。