叶う。 Chapter2
「あら、そうなの?」
水で流した食器を食器洗い機に丁寧に並べて、スイッチを押した私にママは何だか残念そうにそう言った。
「うん、今は無いよ。」
ママが残念そうだったので、私は慌ててそう言った。
今は無いと言っておけば、じゃあ欲しい物が出来たらとママは言ってくれると思ったし、何かあげたいと思ってくれてるママに失礼じゃないと思ったからだ。
「そっか、じゃあ何か欲しくなったら言ってね?」
ママはそう言って優しく笑った。
片付けを終えた私は部屋に戻りたかったけれど、ママが居るのに部屋に戻るのも何だか気が引けたので、ママのテーブルの向かいに座った。
「そういえば、アンナのソファ買いに行かなきゃね。」
向かいに座ったママは、私の顔を見ると突然思い出したかのようにそう言った。
「あ、うん。」
そういえばソファが紅茶で汚れている事を思い出した。
「今日買いに行こうか?アンナ、和也君とは会わないの?」
私はママの言葉に一瞬ドキリと心臓が飛び跳ねた気がした。
だけれどここでおかしな発言をするわけにもいかないので、私はいつもと同じように笑顔を取り繕ってこう言った。