叶う。 Chapter2
駅までの道。
今までのあの子は毎回遠回りをしていたけれど、私は面倒なので裏通りから向かう。
あの子と違って私なら色々な事に対処出来るし、何よりこの寒い中、遠回りをしていく事自体馬鹿らしい。
薄汚い裏通りは好きではないけれど、逆に何だか落ち着く気がするのは、私の心が穢れているからだろう。
ゴミを漁っていたカラス達が、私が近付くと一斉に飛び立った。
私はカラスと言う生き物が好きだ。
漆黒の羽根に黒い瞳は、私がずっと居たあの世界を見ているようで安心するからだ。
もちろん、あの場所に戻りたいとは一ミリも思わないけれど。
何だか懐かしい気分になる。
母親のお腹の中に居る時の感覚に似ているのだろうかと、ふとそんな事を考えた。
くだらない。
そんな事を考える自分自身に呆れてしまう。
暫く歩くと、明らかに仕事帰りだろうホストに絡まれた。
そこそこ容姿が良かったので、私は愛想良く電話番号を交換して別れた。
どんな人間でも、何時なんどき役に立つか分からない。
要らなければ捨てれば良いし、必要なら利用すれば良い。
あの子の携帯には、ほんの数人しか登録がなかったから、まだまだ沢山登録出来る。
だから、とりあえずは登録しといても問題ないだろう。