叶う。 Chapter2
「とりあえず、先に注文しちゃいましょうか?」
ママはメニューを広げながらそう言ったけれど、和也は流石にそれはする気はなかったようだ。
出来る事なら先に食べて帰って欲しいと切実に願うけれど、私のその願いは届く事はなかった。
「いえ、あと10分くらいですし、待ちます。」
笑顔でそう言う和也に、ママもご機嫌だった。
私達はとりあえず飲み物だけ注文すると、顔面蒼白の私をさておきママと和也はニューヨークの街について何やら楽しそうに会話を始めた。
「初めて行った時、僕本当に驚いて。」
「そうなんだ。それでずっとダンスを?」
「はい!それ以来ずっと夢中ですw」
私達が案内された席は8人が座れるくらい広い席だった。
ママ、私、和也の3人で並んで座っているので、ママからも和也からも私の横顔しか見えない。
だから2人とも私の顔が良く見えていないんだと思った。
じゃなきゃ、あまりの顔色の悪さに体調を心配されただろう。
私は楽しそうに会話する2人に挟まれて、地獄へのカウントダウンをゆっくりと数え始めた。
壁に掛けられた大きな時計の時刻は6時半を少し過ぎたくらいだった。
不意に耳の良い私に、カランとベルが鳴る音が聴こえてきた。
私は吐き気を抑えるために、ゆっくりと目を閉じた。