叶う。 Chapter2
「いらっしゃいませ。」
店員さんの元気のいい声が、耳に聴こえてくる。
そして何人かの足音がこちらに向かってやってくるのを敏感に耳で感じ取っていた。
足音が止まると、私は吐かないように口をしっかり閉じて恐る恐る目を開けて視線をゆっくりと上に上げた。
「あれ?母さん達も来てたんだ?」
席に案内されて来たのは、双子と恵令奈とこの前居た毒見役のあの女性だった。
最悪だ。
よりによって、恵令奈が一緒だなんて何を言われるか分かったもんじゃない。
和也はシオンとレオンが傍まで来ると、立ち上がって笑顔で挨拶をした。
「一条和也です。この前は挨拶もしないですみません。よろしくお願いします。」
和也は明らかにシオンに対してそう言って手を差し出したけれど、シオンは無表情で口を聞く事すらしなかったけれど、何故か和也の握手に応じた。
「おー、あーちゃんの彼氏かw俺はレオン宜しく。」
レオンは気まずい空気の中、そう言ってシオンから和也の手を奪った。
「宜しくお願いします。」
和也もレオンの方が扱い易いと咄嗟に判断したんだろう。
2人はお互いに愛想良く握手を交わした。
私はこっそりと、シオンの表情を盗み見た。
シオンはまるで床に落ちたガムを踏んでしまったかのように不機嫌全開だった。