叶う。 Chapter2
気まずい空気はまだまだ終わらなかった。
とりあえず、シオンが和也の握手に応じたのは奇跡だと思った。
「母さん達もここ来るなら一緒に来れば良かったね~」
レオンは何とかその場の空気を巧いことコントロールしようと、柔らかい表情でそう言った。
和也も空気が読めるので、何だか和やかに済まそうと話題を考えているのが分かった。
そんな気まずい中、ママの向かいにはシオンが、私の向かいには恵令奈が、和也の向かいにはレオンが座った。
あの空気が読める黒髪の女性は、レオンの隣に静かに腰を掛けた。
「あ、お母様ですか?初めまして。私“平坂恵令奈”(ひらさかえれな)と申します。紫音さんと親しくさせて頂いております。」
恵令奈はそう言って、お人形みたいな顔でにっこりとママに笑いかけた。
「そう、平坂さん宜しく。」
何だかママの声音が少しだけ冷たい気がした。
「あー、この子口が聞けないから。みやって言うけど。」
レオンはあの黒髪の女の子に親指を向けてそう言った。
サイドを長くした綺麗なボブヘアーのその女の人はぺこりと頭を下げた。
だけれど、みやと呼ばれたあの子が喋れる事を私は知っている。
「そうなの?みやさん、言葉は分かるの?宜しくね。」
ママはみやさんには優しくそう声を掛けた。
こんな気まずい空気じゃなければ、ママに冷たくされた恵令奈にざまぁと思ったかもしれないけれど、今はそんな気分にすらならない。