叶う。 Chapter2
そんなこんなで心休まる暇もないまま、気付いてみたら次々に料理が運ばれてきた。
ママはやっと恵令奈に解放されたのが嬉しかったようで、テーブルに両手を組んでいつものようにお祈りをした。
双子も勿論それに習って手を組むし、和也は以前ママと食事した事があるので、きちんと自分で学習したのか、私達と同じ様に手を組んだ。
突然の事に、恵令奈はまるで意味が分からなかった様子で周りをキョロキョロ伺っていた。
みやと呼ばれる女性ですら、空気を読んで祈りを捧げている中でそんな態度で居られる恵令奈の行動が私にはとても信じられなかった。
「さぁ、頂きましょう。」
祈りを終えたママのその言葉で、恵令奈以外の全員が目を開けた。
そして各々にナイフとフォークを手にして、頂きますを言った。
「平坂さん、育ちが良いのなら食事の前にはきちんと頂きますくらい言うべきだわ。」
ママの怒りは等々限界を迎えた。
皆が頂きますを言う中で、恵令奈は退屈そうにフォークでステーキに添えられた人参を刺したのだ。
ママはとても礼儀を重んじる人なので、そんな一般教養的なことすらしなかった恵令奈が許せなかったんだろう。
恵令奈は突然言われたその言葉に固まった。
「我が家はカトリックだからお祈りをしますけど、それを強要はしませんが、頂きますくらいは常識として言うべきだと思うわ。」
ママはそう言うと、少し気が晴れたのか、又は気を使ったのか、にっこり笑ってそう付け加えた。