叶う。 Chapter2
お店を出る前に、和也はもう一度振り返ってシオンとレオン達に会釈した。
そんな礼儀正しい好青年な和也だけれど、時間的にまずいと思ったのか、お店を出た途端に慌てて私の手を引いて、ママの待つ車の後部座席に乗り込んだ。
ママは私達が乗り込んだのを確認すると、直ぐに車を発進させた。
「ごめんなさいね、折角食事に誘ったのに、何だか嫌な気分にさせちゃったでしょ?」
ママは多分、恵令奈の事を言ったのでいるのだろうと思ったけれど、私は和也の手をしっかりと繋ぎながら黙っていた。
「いえいえ、お兄さんと話せて楽しかったし、食事も美味しかったです。」
和也は嘘を吐くのが苦手だから、それは本当にそう思ったんだろうと思う。
「そう?なら良かったわ。今度はもっとゆっくり時間を取りましょうね。」
「ですね、何か急がせてしまってすみません。」
「良いのよ、私達が誘ったのに。和也君は本当に礼儀正しいのね。レオンと交換したいくらいだわ。」
ママがそう言うと、車は和也の通うダンススクールの前に停車した。
時間は後3分でレッスンが始まる時間だった。
和也はママに丁寧にお礼を言ってから、隣に座っている私に視線を向けると、いつもみたいに優しく私の頭を撫でた。
「終わったら連絡するね。」
和也がそう言ったので、私は笑顔で頷いた。
私の笑顔を確認すると、和也は慌てて車を降りてママに頭を下げてから急いでスクールに入って行った。