叶う。 Chapter2
「はぁ、何だか嫌な気分だわ。」
ママは和也を送ってから、直ぐに私を連れて自宅に帰って来た。
リビングで私が二人分の紅茶を用意していると、ママは溜め息交じりにそう言ってタバコを吸っていた。
ママのイライラの原因は間違いなく恵令奈だったけれど、私は余計なことは言わずにママが喋るのに任せておいた。
「あれで育ちが良いなんて、よく言えるわ。」
「……。」
「やっぱりシオンもあの男の子供ね。」
ママはそう言って、深く溜め息を吐いた。
いきなりそんな事を言い出したママに私は心底驚いたけれど、やっぱり自分から地雷を踏みたくなかったので黙ってた。
「女の趣味の悪さは絶対父親譲りだわ。」
そう言ったママの前に、温かい淹れたての紅茶を静かに差し出して、私も自分の分を持ってママの向かいに座る。
別に私が詮索している訳じゃないし、愚痴ってママの気分が晴れるなら、私は黙って話を聞いてあげるべきだと思った。
「アンナ、あそこにあるウィスキー出してくれる?」
ママは座った私の背後にあるガラスの棚に置かれたウィスキーを指差してそう言った。
ガラスの棚には色々なお酒が綺麗に並べられているけれど、ママがそれを飲むのを目撃するのは今まであまり無かった。
私はお酒の種類が分からなかったから、ママに確認しながらそのお酒をテーブルに運んだ。