叶う。 Chapter2
兄達はまたあの場所に居るのだろうと、ふと考えたけれど私にはもう関係ない。
私は静かなリビングに入って、冷蔵庫から水を取り出すとそのまま少し急ぎ足で自分の部屋に戻った。
部屋に戻った私は、昨日レオンから貰った薬を忘れずに1錠飲んだ。
多分、今日はシオンは部屋には来ないだろうけれど、念には念を入れておかないと。
流石にこの年齢で妊娠なんて、とてもじゃないけれど育てられる訳もないし、私の貧相な身体じゃ赤ちゃんは栄養すら足りないだろう。
そう思った瞬間、自分がなんて馬鹿馬鹿しい事を考えているんだろうと思った。
私の心なんて誰にも知られるわけないのに、何だか無性に恥ずかしくなった。
私は気を取り直して携帯をつけて、和也に電話を掛ける事にした。
時刻は22時を過ぎているから、和也もそろそろ私の電話を待ってくれているだろうとなんとなく思った。
電話はやっぱり直ぐに繋がった。
「もしもし?」
"おっすー。かなう寝る支度終わったの?"
「ううん、まだだけど何か先に声が聞きたい気分だったの。」
"奇遇だな、俺もかなうの声が聞きたい気分だったよw"
和也はそう言って、電話口でも分かるくらい笑った。
「そう言えば、今日ごめんね?いきなりあんなことになっちゃって。」
"ん?全然楽しかったし、かなうの兄さん面白い人だったし。そっくりだけど、全然似てないよな!"
和也はそう言ってまた微かに笑った。