叶う。 Chapter2
電話を切った私は、ご機嫌でバスルームに向かった。
歯磨きをして、寝ようと思ったからだ。
静まり返った廊下を歩いていると、何ともタイミングが悪く玄関の扉が開く音がした。
今すぐ回れ右をして、自室に戻りたい気分になったけれどそういうわけにもいかない。
なるべく、普通に接しなければ。
私はさっきまでの楽しい気分が嘘のように消えてなくなるのを感じながら、バスルームを通り過ぎ玄関に向かって歩いて行った。
「・・・・おかえり。」
どうやら先に帰宅したのか、その場にはシオンが一人で居て、丁度靴を脱いでいる所だった。
レオンだったら良かったのに、と思いながらも私は普通に挨拶をした。
「・・・ただいま。」
シオンの言葉に思わず驚いて顔を上げた。
「お、おかえり。」
私はまさか返事が返ってくるとは思いもよらなくて、2度目のおかえりを言ってしまった。
シオンはそんな私を見ると、家に上がって私の頭をポンポンと撫でてからリビングの方へ向かって行った。
その行動に、私は途端に寒気がした。
シオンは熱でもあるんだろうか?
それとも、あれは本当はシオンじゃなくてレオンなんじゃないかと一瞬頭を過ぎったけれど、あの冷たい感情のない瞳は間違いなくシオンのだ。
一体何がどうなっているのか私には理解出来なくて、私は無意識にシオンの後を追ってリビングに向かった。