叶う。 Chapter2




シオンが大学を卒業するまで、あと5年と少し。
それは長いようで、きっと短いんだろうと思った。


5年経ったら、私はもう二十歳になる。
自分の事は自分で何でも出来ないといけない年齢だ。

8年前この家に引き取られてから、この年齢になるまでの時間はあっという間だった。

だからきっと5年なんて、直ぐに過ぎ去ってしまうに決まっている。

その間にアンナが目覚める事が出来るのだろうか?

想い合う二人を、もう一度触れあわせてあげる事が出来るのだろうか?


幼いながらに、アンナとシオンは心の底にある深い部分で繋がっていた。

それはどんな絆よりも深く、どんな愛情にも勝る繋がりだったんだろうと思った。


ママを悲しませたくない。
シオンが幸せにならなければ、シオンこそが誰より幸せになってくれなければ、きっとアンナもママも幸せだと感じる事が出来ないんだろう。

ならば私に出来る事は一つだけ。


「……もう1つ、聞きたい事があるの。」


私はシオンから視線をそらして、そう言った。


「なんだ?」


「シオンはなぜ、あの取り引きをする事が私の為だと言ったの?」


私の言葉にシオンは一瞬答えるのを躊躇した気がしたけれど、目線を上げてシオンの瞳を捉えると、シオンは諦めたように溜め息を吐いてこう言った。





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