叶う。 Chapter2
「少し・・・時間が欲しいの。」
私がそう言うと、シオンは寂しそうに視線を逸らした。
「・・・お前の幸せを願ってるよ。」
「・・・うん。私もシオンの幸せを願ってるよ。」
「・・・・そろそろ眠ったほうが良い。」
シオンはそう言って立ち上がると、私の額にキスをした。
それがおやすみの合図である事を、私は知っている。
シオンの体温も、その唇の柔らかさも、私は知っている。
途端に泣きたくなったけれど、私は涙を見せないように俯きながらシオンの部屋を出た。
部屋を出た途端、声が漏れないように口元を両手で押さえた。
何故こんなにも悲しいのか自分でも分からなかった。
だけれどもうシオンの前では涙を見せる事はしたくなかった。
私なんかより、きっとシオンの方が泣きたい気分に決まっているのだから。
流れ落ちる涙が邪魔をして視界が歪んだけれど、私はなんとか自分の部屋に辿り着いた。
そして直ぐに日記帳を取り出した。
日記帳は涙で濡れて、紙がしわくちゃになってしまったけれど、私は今起こったこと全てを文字にした。
忘れないうちに、シオンの言った言葉全てをその日記に綴った。
そして私が言ったこと、大切な約束のこと、その全てを書き終えると、またきちんと鍵を掛けて机にしまった。
いつの日か、誰よりも幸せだと言えるように願いを込めて。
私は額の前で手を組むと、目を閉じて祈った。