叶う。 Chapter2
私は身支度を済ますと、そのままリビングに向かった。
今日はママも居るはずだから、ご飯を作る必要はないけれど、何だか早くママの顔を見たかった。
ママはシオンの事を知っているのだろうか?
私はそんな事を考えながら、リビングの扉を静かに開けた。
物音がしなかったので、まさかその場所にママが居るとは思わなかった。
ママはダイニングテーブルに座り、宙を見つめながらいつもの様にタバコを吸っていた。
「おはよう、ママ。」
私が静かにそう声を掛けると、ママは驚いたようにビクッとした。
振動でタバコの灰がテーブルに落ちた。
「……おはようアンナ。びっくりしちゃったわ。」
ママは私の方を見ずにそう言って、テーブルに落ちた灰を布巾で拭き取ると、キッチンに入って行った。
なぜ、私を見てくれないのかわからなかったけれど、キッチンに入って行ったママの横顔をみると、その理由が分かった。
いつも綺麗なママの顔が、何だか浮腫んでる気がしたし、目か腫れぼったい。
ママが泣いた理由はきっと私と同じなんだろうと、私は密かにそう思った。
シオンから聞いたのか、はたまた例の父親から聞いたのかは分からないけれど、きっとそれが原因なのだと思った。