叶う。 Chapter2
だけれどママは今は何か言うつもりもなさそうな雰囲気だったので、私も何も言わずにママと一緒にキッチンに立った。
ママが料理を作っている間に私は人数分のコーヒーを淹れて、いつものようにパンをトースターに乗せると、双子が起きてくる前にテーブルにお皿を出したりして食事の準備を整えた。
全てが終わると、タイミング良くママがフライパンからソーセージと目玉焼きを各お皿にとり分けたので、私はそのまま席に着いた。
出来る事なら、ママの話を聞いてあげたいけれど多分そのタイミングは今じゃない。
だから、私はあえてママに違う話を振ってみる事にした。
テーブルで手を組んでお祈りを済ませると、小さく頂きますを言った私をママはキッチンからちらりと見ていた。
「ねぇ、ママ?」
「・・・うん?」
ママは突然話しかけられて一瞬驚いた顔をしたけれど、その声音はいつもと変わらなかった。
「あのね、発表会終わったからピアノ、どうしようかと思って。」
それは去年からママと話していたことで、2年の発表会が終わったら、私は受験に向けて勉強しなくてはいけない。
音楽を専攻するにしても、普通の高校に行くにしても、今までのように週4日に2時間もピアノに通う事は普通に考えて難しい。
今日は月曜日だからピアノはお休みだけれど、そういう話も先生ともきちんとしなくちゃいけなかった。
だから何気なくそう聞いてみた。
だけれどママは何だか酷く困った顔をした。