叶う。 Chapter2
何だかそんなレオンとママのやり取りに、少しだけ安心した。
いつもと同じ日常風景を見られるだけでこんなに安心出来るなんて、きっと私ももう限界なのかもしれない。
「ごめんなさいね、アンナ。大事な話があるの。だけど時間がないから今は話せないわ。きちんと時間を作ってちゃんと話しましょう。ピアノの事も、そうね。考えておくわ、とりあえずは今まで通りにお願い出来る?」
「うん。」
「本当にごめんね、ママも今は考える時間がなくて。」
ママのその言葉で、きっとママ自身が何かいっぱいいっぱいな悩みを抱えているだろう事が分かった。
それはきっとシオンの事だけじゃないんだろう。
レオンがさっき、家族の事と言っていたのだから、きっとシオン以外にもトラブルがあると考えて良いだろうと思った。
「私は大丈夫だよ。」
私はそう言ってママに笑顔を向けた。
ママは今にも泣き出しそうな顔をして、私の髪を撫でるとレオンと同じように私の頭の天辺にキスをした。
「学校気をつけていってらっしゃい。ママは少し眠るわ。」
ママは私達3人にそう言うと、静かにリビングの扉を開けた。
レオンはママに打たれた所が痛いのか、ブスっとしながらもその後ろ姿に「おやすみ」と声を掛けていたけれど、ママは魂が抜けたようにフラフラとしながらリビングを出て行った。