叶う。 Chapter2
「そういえば、今日ピアノ?」
学校がもう目の前に迫った時、和也がそう言った。
「ううん、暫くお休み・・・。」
私は少し悲しそうな顔をして、和也にそう告げた。
「だよな、その怪我じゃ弾けないもんなー。」
「・・・うん。」
「じゃあ、帰りも一緒に帰ろうぜ。俺スクール行くし。」
「うん!」
校門を抜けると、自然に繋いだ手を離して私はそう返事をした。
どうせ家に帰っても、シオンとレオンの相手をしなきゃいけないし、だったら和也と遊んでる方が幾分マシだ。
和也は私の返事を聞いて、更にご機嫌になった。
一緒に下駄箱に入ると、なぜか少し離れた場所から視線を感じてふと振り返る。
遠巻きに私を見ている女が3人いる。
全然似合ってもない派手な髪形に、つけ睫毛にメイク。
こちらを睨みつけて、何やらひそひそと話をしている様子だった。
言われている事は大体見当がつくので、私は少し目を細めてその子達を一瞥すると、下駄箱のロッカーを開けた。
ひょっとしたら、昔ながらの嫌がらせでもされているかと思ったけれど、中にあったのは私の上履きと紙切れ一枚だった。
私は小さく折りたたまれた紙切れを手に取って、上履きに履き替える。
念のため上履きの中もしっかりと確認したけれど、特に何かされている形跡はなさそうだった。