叶う。 Chapter2
何だか見なければ良かった気分になったけれど、その瞬間和也がこっちをちらりと見た。
漆黒の黒い瞳と、私の視線がぶつかった。
和也はそんな私を優しい眼差しで見つめてきた。
見られたことに焦ったり、そんな態度をすることすらなく真っ直ぐに私を見つめるその瞳に、私は何故か胸が苦しくなった。
その視線の意味はきっと、疚しい事がないからそんな風に私を見ていられるのだという事に気付いてしまったからだ。
和也とその子達が何を話していたかは分からないけれど、和也は一言、二言、その子達に何かを言うと、泣いている子をそのままに鞄を持ってこちらに向かって歩いてきた。
「ごめんな、お待たせ。」
教室から出ると、和也は私達にそう言った。
途端に凛が噛み付くようにこう言った。
「つーか、何してんのよ!?」
「話してただけだ。」
「彼女待たせてまで何の話してるわけ?」
「いや、お前には関係ない話だよ。」
「は?つーか、言えない様な話なわけ?」
凛が語尾を強めて和也に詰め寄ったけれど、和也は口を開かなかった。
「まぁまぁ、和也はちゃんとかなうに話すよ。凛は大人しくしなさい。」
祐希はそう言って凛を落ち着かせるように、凛の手を繋いだ。
凛は何だか納得いかない顔をしていたけれど、私が何も言わないのでどうやら諦めた様子だった。