叶う。 Chapter2
だけれどその言葉で、私はある事を思い出した。
「ちょっと鞄取らせて。」
和也はしっかりと私を後ろから抱き締めているので、扉の近くに置いた鞄に手が届かない。
「えー、やっと捕まえたのに。」
和也は心底残念そうにそんな事を言ったけれど、意外とあっさりと手を離してくれた。
私は鞄を開くと、昨日仕舞った石鹸と綺麗に包装されたあの写真立てを取り出して、また和也の隣に戻った。
「これね、私が使ってる石鹸。全身使えるから使ってみて。あと、こっちは日記のお礼。」
私はそう言って、和也に石鹸と写真立てを手渡した。
「石鹸マジ嬉しい!お礼とか、良いのに……でもめっちゃ嬉しい!」
和也はそう言って私をまた引き寄せると、ぎゅっと抱き締めた。
私は写真立てを早く見て欲しかったけれど、和也は何故か私をずっと抱き締めたままだった。
「ごめんな。もう少しこうさせて。」
考えてみたら、和也にこうやって抱き締められる事自体がすごく久し振りな気がした。
暫く無言で抱き合っていたけれど、不意に和也は少しだけ身体を離すと、私の瞳をしっかりと見つめた。
その仕草に、私はゆっくりと目を綴じた。
次の瞬間、和也はチュッと触れるだけのキスをした。
「なんか……久々にかなうに触れた。」
目を開けた私に、和也は優しくそう言ってもう一度私を抱き締めてからゆっくりと身体を離した。