叶う。 Chapter2
「かなうは俺が好きじゃないんでしょ?」
「・・・もう好きじゃない。」
「じゃあ、何で泣いてるの?」
和也に言われて初めて気がついた。
私は気がつかないうちに涙を流してた。
「それはレイプされた時を思い出したから。」
私は咄嗟にそんな嘘を吐いた。
だけれど和也は呆れたようにこう言った。
「だったら何でこんな事させたの?俺をそいつらと同じように恨みたかったから?」
「・・・・。」
「かなうがどんなに俺を恨んでも、俺の気持ちは変わらないよ?」
和也の言葉に私は自分がしたことは、和也が私を嫌いになってくれる為じゃなく、自分が和也を嫌いになる為だったという事に気がついた。
私は心底、自分の馬鹿さ加減にうんざりした。
だけれど私の足りない脳味噌じゃ、上手い言い訳すら思い浮かばなくて、私は無言を貫き通した。
「かなうが話す気ないなら・・・」
和也は相変わらず扉を押さえたまま、私の顔を覗き込んだ。
何だか物凄く、嫌な予感しかしなかった。
「お兄さんに直接聞いてくる。」
「ダメ!!」
私は咄嗟にそう言ってしまった。
だけれど和也にはその反応で充分だったみたいだ。
「じゃあ、話して。納得出来るように。」
和也はそう言って、真っ直ぐに私の瞳を見つめた。
その純真な漆黒の瞳を見た瞬間、この人に嘘は通用しないのだと改めて実感した。