叶う。 Chapter2
和也の言葉に、私は黙ったまま自分の頭を指差した。
和也はそんな私を見て、瞳を大きく見開いた。
「う・・・そだろ?」
「本当だよ。だから、私は和也にも嘘を吐いてたの。私はあなたが好きになったかなうじゃない。」
「・・・・・・。」
和也は絶句して唖然と私を見つめていた。
「勘の良いあなたなら、いつか気がつくと思ってた。」
「ちょっと待て・・・じゃあ多重人格ってこと?」
「そうとも言うかもね。でも、ちょっと違うの。私はあの子と入れ替わる事が出来ない。多重人格なら入れ替われるし会話も出来る。だけど私はあの子と会話する事も入れ替わる事も出来ない。」
「じゃあ、どうして今入れ替わってるの?なんで入れ替わったの?」
私は思い出したくない過去を薄っすらと記憶に呼び覚ました。
「かなうは母親に虐待されてた。それも普通じゃ考えられないくらい酷い虐待を。あの子の心はそれに耐えられなかった。だから私が生まれた。だけどあの子は私と入れ替わる時、必ず気を失うの。だから私の存在をあの子はずっと知らなかった。意識がなかったから。」
「・・・・・。」
「だけどそんな母親が自殺して、あの子は偶々病院で出会った兄に拾われた。兄はあの子を私の代わりにずっと守ってきた。だから私の存在が外に出ることはここ8年間なかった。だけど、ちょうど1ヶ月まえくらいだったかな・・・・。」