叶う。 Chapter2
言われてみれば、その通りだった。
アンナは私の存在を知らなかったから、まだ文字も書けなかった私にはアンナにあの約束を教える事は出来なかった。
「・・・・・。」
言われて初めて、その真実に気がついた私は思わず無言になった。
「だったら、それは君が気に病むことじゃないでしょ?お兄さんだって、きっとそれを分かってると思うよ。だから、お兄さんはきっと今の君の事が純粋に好きだから傍に居て欲しいんだと思う。」
そんなはずはない。
シオンはアンナを愛してた。
アンナの面影を持っているから、私を傍に置いておきたいのだ。
「・・・・それに正直驚いたけど、俺も君がかなうじゃないって言っても、自分でも不思議だけど気持ちは変わらない。やっぱり好きだよ。」
和也はそう言っていつもと同じ様に、優しく私を見つめた。
その優しい眼差しに、また涙が出そうになる。
「だけど、決めるのはかなうだよ?例えかなうがお兄さんの傍に居ることを選んでも、さっきも言ったけど、可能性が0じゃない限り俺は身を退く気はないよ。」
和也の言葉に私はもう何もいう事が出来なかった。
ただ、思うのはこんなにも大切に想ってくれる人はもう一生現れないだろうという事だけだった。