叶う。 Chapter2
その後の和也は至っていつも通りに私に接してきた。
別れを選ぶつもりで居た私にとって、それは想定外の事だった。
こんな中途半端な私を、こんなにも大事にしてくれる和也の優しさは一体何処から来るのだろうかと疑問に思う。
それでも私は、きっとシオンを選ぶ事になる。
何故なら自分の中できちんとそう決めてしまったからだ。
和也はきっと大人になっても、ずっとこのまま優しさに溢れた生活を送るんだろうと思う。
きっと素敵な奥さんが出来て、子供に囲まれて、優しい旦那さんであり愛情が溢れた父親になるんだろうとそう思うからだ。
だけれどシオンは全く違う生き方をしなくてはいけない。
自分の意思で、やりたい事も出来ず、いつも死と隣り合わせの生活だ。
普通の神経なら耐えられない程の苦痛な日々をシオンは過ごさなきゃいけない。
それに育てて貰った恩もある。
そんな苦痛の中でシオンが生きていくのならば、私は少しでもシオンの気晴らしになれればそれでいい。
きっとアンナもそれを願うはずだから。
私はいつも通りに振舞う和也に優しく微笑みかけながら、そんな事を考えていた。
きっと和也もそんな事はお見通しだったんだろうけれど、それでも一切私を責めたり聞き出そうとしたりはもうしなかった。
それはきっと和也の優しさなんだろう。
聞き出すだけが愛情じゃない。
話すまで待ってあげるのが愛情なのだと、私は気がついた。