叶う。 Chapter2
「大丈夫です。多分私を待ってるのかもしれないですし、開けてください。」
私はにっこりと笑って岸谷さんにそう言った。
「本当かい?」
「ええ、この前の発表会でも会ってますし。」
疑り深く聞いてくる岸谷さんに、私は相変わらず笑顔でそう言った。
「それなら、良いんだけど。」
岸谷さんはそう言って、マンションの扉を開けてくれた。
「何かあったら通報するから、直ぐ内線で知らせてね。」
岸谷さんはマンションに入る私にそう言ったけれど、万が一そんな事になったら岸谷さんが危ないだろうと私は思った。
高鳴る心臓が酷く痛んだけれど、私はシオンのように感情を押し殺した。
これから対峙しなければならない相手は、きっとシオンなんか比べ物にならないような人物なんだろう。
いくらママが居ても、シオンやレオンが居ても、きっと何の助けにもならないのだと思う。
エレベーターのカードキーを通すと暗証番号を打ち込む指先が震えた。
一言でも間違った答えを私が出したら、その人は私を躊躇することなく殺すんだろう。
だけれどそれならそれで仕方がない。
私はやって来たエレベーターに乗り込むと、15のボタンにそっと触れた。
一体何が起こっているのか、せめてそれだけは自分の目で確かめたかった。