叶う。 Chapter2
私は涙が零れそうになった。
私がしたかったのは、こんな事だったのだろうか、と思うと何故かとても悲しくなった。
私が望んだ結果で、きっと誰かが家族を失って悲しんでいると思うと、何だか自分がすごく汚い人間に思えた。
私は誰かの大切な人を奪ったのだ。
あの双子の父親と同じように。
私から家族を奪ったあの男と、私は同じなのだと気付いた。
私はもう堕ちる所まで、堕ちていたのだ。
私はやっぱりアンナには戻れない。
純粋無垢なあの子には、こんな現実はきっと耐えられない。
そんな私の心を知ってか知らずか、月島省吾は相変わらず冷めた視線を私に向けてこう言った。
「やっぱりまだガキだな。後悔してんだろ?」
「・・・・・・。」
「後悔してんなら生きろ。反省しながらな。」
「・・・・・・・。」
「失敗を知らなきゃ大人にはなれねぇんだよ。失敗して初めて人間ってのは成長するんだ。」
その言葉は私に重く重く圧し掛かった。
「まぁ、お前が生きたくないなら死ねばいいが。約束したんだろ?また家族に会うって。」
私は指先で涙を拭って、月島省吾をじっと見つめた。
「約束は守るもんだ。ボスですらお前との約束守っただろうが。」
月島省吾はそう言って、ポケットに手を入れると真新しい携帯を私に差し出した。
「会話は全て録音されるし、盗聴されている事も忘れるな。お前の位置情報も向こうは全て把握済みだ。」
私は震える手でその携帯を受け取ると、大事に鞄にしまった。