叶う。 Chapter2
約束を守る。
私はその言葉を深く心に刻み込んだ。
車は海沿いにあるレストランの駐車場にゆっくりと停車した。
助手席から降りた男が、私達が座る後部座席の扉を開くと月島省吾は私の手を引いて車を降りた。
潮風の匂いが、何だかとても爽やかに感じて私はシオンの香水の香りを何故か思い出した。
匂いは全然違うのに、頬を撫でるその風が何だかすごく心地よかった。
車を降りた私に、月島省吾は自分の腕を差し出した。
私は一瞬躊躇したけれど、その腕に掴まるようにそっと手を置いた。
レストランに入ると、そこは私が今まで入った事のないようなこじんまりとしたお店だった。
「あら、省吾君いらっしゃい。」
扉の開いた音に気付いたのか、奥から優しい笑顔を向ける50歳くらいの女性が現れた。
「おばちゃんこんちわ。」
月島省吾はそう言って笑顔でそのおばさんに挨拶をした。
「あら、今日は随分可愛らしい子が一緒なのね、珍しい。」
おばさんはそう言って、優しく私を見た。
「俺の娘だよ。」
月島省吾はそう言って、私を見て笑った。
その雰囲気はさっきまでとは違ってとても優しい雰囲気だった。
「あら?省吾君結婚してたっけ?びっくりだわ、ちょっとあなた!」
おばさんはそう言うと、奥の厨房らしき場所に居る誰かに呼びかけた。
暫く待つと、奥からおばさんと同じくらいの年齢の男性が現れた。
きっとこの店は夫婦でやっているのだと、私はそう思った。