叶う。 Chapter2
「月島アンナです。」
「あら、アンナなんて素敵な名前ね?省吾君がつけたの?」
「そう。産まれた時赤毛のアンに似てたからね。」
私はその言葉に思わず笑ってしまいそうになったけれど、咳払いをしてなんとか平静を保った。
私が産まれた時の姿なんて知らないくせに、何故か月島省吾はでたらめの私の幼少期をおばさんと会話し始めた。
だけれど何故かそんなでたらめの話でも、聞いているだけでとても楽しい気分になれた。
私の薄汚い過去ではなく、月島省吾が愛したわが子の成長記録はまるで本当に自分が育てたような信憑性に満ちていた。
実はこの人は、本当に子供を育てた事があるんじゃないかと私は密かに思った。
「おまたせ。」
楽しい会話をしていると、おじさんが厨房からやってきて私達の前にシーフードカレーとサラダを運んで来てくれた。
それはとても美味しそうで、私は自分が昨日からろくに食事を取ってない事を思い出した。
月島省吾はそれを見て目をキラキラとさせていた。
「おじちゃんのカレー本当に旨いんだよ、食べてごらんアンナ。」
お祈りをするべきか迷ったけれど、雰囲気的にそのまま食べるべきだろうと思った私は「頂きます。」だけを言うと、スプーンを手に取りカレーを一口分掬って口に運んだ。