叶う。 Chapter2
途端に口の中に広がるスパイシーな香辛料と、ココナッツの微かな甘味が私の食欲をとても刺激した。
「美味しい・・・。」
思わずそう口に出すと、月島省吾は満足そうに笑って自分も食事を取り始めた。
お客さんは私達だけだったので、おじさんとおばさんは月島省吾とずっと喋っていた。
私は食べる事に集中していたので、話にはあまり参加しなかったけれど、内容は何となく理解出来ていた。
どうやらこのお店の夫婦は月島省吾の同級生の親御さんで、たまに時間があるとこうしてカレーを食べにやってくるらしかった。
おじさんもおばさんも、突然現れた娘(仮)にとても驚いたみたいだけれど、優しく接してくれていたので、私はすごく居心地がよくて、出された食事を完食する事が出来た。
おばさんは私にデザートを勧めてくれたけれど、流石に食べれないと思ったので丁寧に断った。
それじゃあお土産にと、私にタピオカ入りのマンゴードリンクを持たせてくれたので、私はまた丁寧にお礼を言ったけれど、月島省吾が先に出てろと言ったので、きちんと挨拶を済ませてお店を出た。
しばらく外で心地よい風に当たって海を眺めていると、直ぐに月島省吾がお店を出てきた。
私は海からそっちに視線を移すと、月島省吾の顔付きがさっきとは変わった事に気がついた。
あんなにニコニコしていたのに、もうすっかり最初会った時の冷めた顔に戻っていた。