叶う。 Chapter2
視界に映ったのは、月島省吾の綺麗に磨かれた革靴と、自宅にあったようなレンガの敷石だった。
私はゆっくりと顔を上げて、辺りを見回した。
目の前にある大きな赤レンガで出来た洋館は、所々に蔦が絡まっているがとても立派だった。
木々に囲まれている中に、遠くに見える小さな彫刻や綺麗に手入れされた庭が視界に映る。
一体自分は何処に連れてこられたんだろうと、私には全く意味が分からなかった。
車を降りた付き人は一人で、運転していた人はそのまま車を家の裏手の方に運転していってしまった。
未だ蹲る私に、月島省吾は相変わらず冷めた声でもう一度こう言った。
「お前は何をしてる?」
そう言って、痺れを切らせたのか私の腕を掴んで引っ張ると、無理やり立ち上がらせた。
「・・・え?・・・・ここ、は?」
私は声が震えないようにそう言って、月島省吾の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「見れば分かるだろ?」
月島省吾はそう言って、色素の薄いこげ茶色の目を細めて私を見つめた。
私は何だかとてつもなく、嫌な予感しかしなかった。