叶う。 Chapter2
「だ、大丈夫・・・気持ち悪いから電車乗れないし、ママに連絡したらタクシーで帰っておいでって。」
「ん?そうなの?」
「うん、さっきママに連絡入れたから・・・。」
私はそう言ってゆっくり立ち上がると、和也に手を差し出した。
純粋に鞄を返して貰いたかっただけなんだけれど、なぜか和也はその手を繋いだ。
「心配だから、タクシー乗り場まで一緒に行くよ。」
そう言って、私を気遣っているのかゆっくりと歩いて教室を出た。
正直なところ、早く一人になりたかった私にとってはいい迷惑だったけれど仕方ない。
ハンカチを口元に当てたまま、私は和也に連れられて廊下を歩いた。
だけれど、ラッキーな事に下駄箱の近くで担任の先生とばったり出くわした。
「おい、一条、月島、どこに行くんだ?」
厳つい見た目の担任はそう言って、私達の元へ走ってきた。
「・・・先生、ごめんなさい。私、具合悪くて。」
私はそう言って担任をちらりと見た。
「そうか、顔色が悪いな。保健室には行ったのか?」
「いえ、行ってません・・・。」
「早退するならちゃんと保健室に行ってからだぞ月島。」
「はい、ごめんなさい。」
「まぁ、今日は先生が確認したから良いが。気をつけて帰りなさい。」
「・・・はい。」
今にも吐き出したい気分だったので、相当顔色が悪かったんだろう。
担任は私にそう言うと、和也に向き直った。