叶う。 Chapter2
あの瞬間から、私は変わった。
前よりもずっと"まとも"な人間に。
沢山笑えるし、沢山喋れるし、沢山泣ける。
ママはそんな私に戸惑って、こうして病院に連れて来たけれど、多分直ぐに今の私を受け入れてくれるだろう。
馬鹿なあの子と違って、私は上手に甘えるし、良い子でいられる。
そしてレオンも同じ。
少し甘えておけば、きっと前よりもっと私を甘やかすだろうし、可愛がってくれるだろう。
問題はシオンだ。
一瞬で私の存在を見破ったから、注意が必要かもしれない。
だけれど、シオンはママにその事を話さなかった。
昨夜あった出来事は、ママに伝わっていない。
もしシオンが話していれば、おそらく私は強制的に入院させられただろうから、そう推測している。
それにしても、シオンの考えている事が全く分からないのが少し不安だ。
昨夜あの後、シオンは突然私を抱いた。
なぜかは、分からない。
別に減るもんじゃないからどうでもいいんだけど、あんな事があった後でそんな事をされるとは予想すらしてなかったから、正直驚いた。
だけど、同時にこの人には注意が必要だと分かったから良かった。
それにああいう人は気が楽で良い。
演技をするのは疲れるけれど、あの人に演技は必要ない。
だけれど時間はたっぷりあるから、周りの人達には徐々に今の自分をさらけ出せればそれで良い。