叶う。 Chapter2
「一条、お前はどこに行く気だ?」
私に話しかける時とは正反対に、担任は威厳たっぷりに和也にそう言った。
「途中まで送ってくだけだよ。」
和也は当たり前だろってくらいの軽い感じで担任にそう言った。
「学校が終わるまでは、学校外に出る事は禁止だ。さっさと教室に戻りなさい。」
担任はそう言うと、和也が持っている私の鞄を手に取った。
和也は酷く残念そうに溜息を吐いた。
「ん?これは月島の鞄か?」
「だから途中まで送ってくって言ってんじゃん。」
「ダメだ、お前もそう言って帰るつもりだろう?」
「帰らねぇよ。」
和也はそう言ったけれど、嬉しい事に担任は私に鞄を返してくれた。
「気をつけて帰るように。」
「はい。」
担任は私にそう言うと、和也を引っ張って私から引き離した。
和也は駄々っ子みたいに担任に文句を言っていたけれど、最後は諦めたようで、後で必ず連絡してと言い残してそのまま担任に拉致されていった。
一人になった私はようやく安心して、さっさと靴を履き替えて学校を出た。
この辺の地域は私の住んでいる地域と違って、どちらかと言えば住宅街ばっかりで刺激がない。
まぁ、それだけ治安も良いのだろうけれど、私は絶対に住みたいとは思わなかった。
刺激のない単調な毎日ほど、生きてて無意味だと心からそう思う。