叶う。 Chapter2




「一条、お前はどこに行く気だ?」

私に話しかける時とは正反対に、担任は威厳たっぷりに和也にそう言った。

「途中まで送ってくだけだよ。」

和也は当たり前だろってくらいの軽い感じで担任にそう言った。

「学校が終わるまでは、学校外に出る事は禁止だ。さっさと教室に戻りなさい。」

担任はそう言うと、和也が持っている私の鞄を手に取った。

和也は酷く残念そうに溜息を吐いた。

「ん?これは月島の鞄か?」

「だから途中まで送ってくって言ってんじゃん。」

「ダメだ、お前もそう言って帰るつもりだろう?」

「帰らねぇよ。」

和也はそう言ったけれど、嬉しい事に担任は私に鞄を返してくれた。

「気をつけて帰るように。」

「はい。」

担任は私にそう言うと、和也を引っ張って私から引き離した。

和也は駄々っ子みたいに担任に文句を言っていたけれど、最後は諦めたようで、後で必ず連絡してと言い残してそのまま担任に拉致されていった。


一人になった私はようやく安心して、さっさと靴を履き替えて学校を出た。

この辺の地域は私の住んでいる地域と違って、どちらかと言えば住宅街ばっかりで刺激がない。

まぁ、それだけ治安も良いのだろうけれど、私は絶対に住みたいとは思わなかった。
刺激のない単調な毎日ほど、生きてて無意味だと心からそう思う。




< 50 / 458 >

この作品をシェア

pagetop