叶う。 Chapter2
鞄から携帯を取り出すと、凛の番号をタッチして耳に当てる。
凛は3コールくらいで電話に出た。
「もしもし?凛?家に着いたよ?」
“誰だてめぇは?”
だけれど電話から聞こえてきたのは、低く威圧するような男の声だった。
私は一瞬、掛け間違えたかと思って携帯を確認した。
しかし電話にはきちんと凛の名前が表示されていた。
「あなたはだぁれ?」
私は冷静に、だけれど少し子供っぽくそう言った。
“は?てめぇほんとに誰だ?”
子供っぽく喋ったのが良かったのか、相手は少し声を落としてそう言った。
「私、凛に電話を掛けたはずなんだけど。」
“凛は今いねぇよ。用件なら伝えといてやる。”
男がそう言った時、微かに女性が苦しそうに呻くような小さな声が聞こえた。
学校からのんびり寄り道しながらきたけれど、僅か1時間くらいの間に一体凛の身に何があったんだろう?
「・・・・ねぇ、私凛の友達なの。会う約束をしているんだけれど、凛を返してくれない?」
おそらく、凛の彼氏だろうと私は予想してそう言った。
微かに聞こえた声が、どう聞いても凛の声にしか聞こえなかったからだ。
“は?凛の友達だって?友達なんかいたのかよw”
男は楽しそうにそう言ったけれど、俄然私に興味が出た様子で、私は心の中で笑顔になった。