叶う。 Chapter2
“お前、名前は?”
「かなうだよ。」
“残念ながら凛は今家にいないぜ?”
「じゃあ、何処にいるの?」
“さぁな?お前が来るなら教えてやってもいいぜ?”
男は楽しそうにそんな事を言う。
そんな楽しそうなところに、私が行かないわけがなかった。
「・・・・行くよ。行ったら凛を返してくれるんでしょ?」
“さぁな?お前次第だな。”
「どういう意味?」
“お前がブスだったら返さねぇww”
男はそう言ってケタケタと笑った。
その笑い声が癪に触ったので、私は黙っておいた。
“まぁ、来る気があるなら来いよ。迎えに行かせっから。”
「どこに居れば良いの?」
“そこに居ればいいさ、直ぐ迎えに行かせる。逃げるなよ?”
男は挑発的にそう言って、電話を切った。
凛の様子を見に来ただけだったのに、これは大層面白い事になりそうな予感がして、思わず笑い出しそうになった。
なんて自分はラッキーなんだろう。
しかも態々お迎えまで寄こしてくれるなんて、結構良いヤツじゃないかと一瞬思ったけれど、私はほんの少し凛の事が心配になってきた。
暴力を振るわれる事が、どれほど惨めで辛い事かを私は誰よりもよく知っている。
まぁ子供だった私が耐えられたのだから、もう大人みたいな凛なら大丈夫だろうけれど、何だか少し心配だ。