叶う。 Chapter2
バスルームの扉を軽く叩くと、静かにその扉を開いた。
微かにシャワーの流れる音が聞こえているので、おそらく凛がまだシャワーを浴びているのだろう。
「凛?ちょっと入るね。」
私は少し声を大きくして、凛に呼び掛けた。
汚れた制服をクリーニング用の脱衣かごに放り投げたと同時に、バスルームの扉を開けて凛が顔を出した。
「タオル、これ使って。」
顔を出した凛に、私がいつも使っているバスタオルを手渡した。
「外で待ってるね。」
私はそう言って、バスルームを出た。
バスルームの向かいの壁を背にして、凛が出て来るのを待った。
本来なら寒いから部屋に戻りたい気分だけれど、凛はきっと私の部屋も分からないだろう。
それにバスタオルを手渡したので、そんなに待たされる事もないと思った。
案の定直ぐに、小さな音を立ててバスルームの扉が開いて、凛が顔を覗かせた。
お風呂に入って落ち着いたのか、穏やかな表情だったけれど、顔は相変わらず酷く腫れ上がり、何だか見ているだけで痛そうだった。
「ちょっとは落ち着いた?」
私がそう声を掛けると、凛はゆっくりと頷いた。
「本当に……ごめんね。」
凛はそう言ってまた泣き出しそうな顔をしたので、私は首を振って、凛の手を取り自分の部屋に連れて行った。