叶う。 Chapter2
正直なところもう余り時間がないので、凛が泣いて無駄に時間が経つのは好ましくない。
部屋に入ると、凛をソファに座らせてから私はさっきのペットボトルを凛に手渡した。
「ありがとう……」
凛はそう言って、ペットボトルに口をつけた。
相当喉が渇いていたのか、一気にほとんど飲み干した。
私は凛から言葉を引き出す為に、黙ってその光景をじっと見ていた。
おそらく、凛は今自分の事だけでいっぱいいっぱいで、私の変化に気付いていない。
それは私にとって好都合だ。
「ごめんね、かなう……巻き込んじゃって。」
私が暫く無言だったので、凛はゆっくりそう言った。
「ううん。大丈夫だよ。」
「アイツになんかされなかった?」
「うん、凛を返してって言ったら、あの場所に連れてかれただけだよ。」
「そうなの?私てっきりかなうのお兄さんがアイツに何か言ってくれたのかと……」
なるほど。
やっぱり樹より、シオンが方が上の立場って事か。
「ねぇ、凛?どうしてあんな事になったのか、ちゃんと話してくれない?出来たら凛の力になりたいし、正直、私どうして凛があんな目に合わされたのか、分からない事が多すぎてすごく心配なの。」
私はそう言って、しっかりと凛と視線を合わせた。
きっと、今の凛なら喋るだろうと思った。